■エルゴプラクシー12君微笑めば/hideout_s川邊優子c寺岡厳d鳥羽聡g竹森由加

前回について書き忘れていたことをメモ。
「んなわけないだろ。ビンセント・ロー」。このセリフ、先週は、物語のリズムを作り出す為の、演出上の繰り返しのセリフとしてしか思ってなかったんですが、劇中の独白と対話により語られる世界についての認識を考えると、実は同じ主体が作り出した、同じセリフのような気がしてきた。
ラストで印象的だった、現実世界のリル・メイヤーによる冒頭のセリフ。リルもまた同じ主体意識が背景にいて、あのセリフを述べている/述べさせられているってことだろうと考えてみたけどどうでしょう。


さて、前回が傑作回だったのも不利に働き、この回は、絵的にも、画面的にも、話的にも、ちょっとイマイチ感が・・・・・・・前回の重量級の世界についての観念を承ける話にしては、物語が軽く、腰が定まらないカンジがしちゃった。


前回の仮構世界での、世界についての大きな想念の残滓のあと、リルさんの前では弱気丸出しのビンセントが何を考えたかと言えば、「好きです。リルさんのことが」。
リルさんを弱々しく押し倒したりしていますよ。
・・・・まあ、押し倒すのはいいが、徹底的に、気弱に、恐る恐るってところが違和感。
「良き市民」だったビンセントは、ロムドを出て、一人で生きていく精神の強さと自由を手に入れたはずなのに。
生命不在の荒涼とした暗い世界でたったひとり。旅の道連れは次々に死んでいく。人工培養された「良き市民」では、とても耐えられないようなストレスを越えてきたのに、こう来るのかしらって思った。
それに、自分が何者であるかを確信し、なんらかの心理的変貌があったんじゃ・・・・


きっと、ウブなビンセントは、人を好きだということへの耐性がないってことなんでしょう。それとこれとは、心理的に別の話で、人を求め始めたってことが重要ってことなのかな。
それで結局、気弱なダメ男が、気の強いキャリアウーマンの手のひらの上で転がされる構図になっちゃっております。
キスをして、ビンセントがうっとりと目をつぶっている隙に、自分の安全を確保しようとするリルさん・・・・ビンセント、完璧に、ピエロ状態。


これって素直に、ビンセントのウブさを味わうのか。おねーさまに、手なずけられちゃうのプラクシー。
でも、この回から、プラクシーとしての自我と、「良き市民」ビンセント・ローとしての自我が衝突し始めた様子。
「この目で見せてもらった。確かにおまえはプラクシーだ。そして、この銃は、プラクシーを殺すことが出来る唯一の武器。ビンセント、この引き金一つでおまえを殺すことも・・・」
「ころすだと?オレを殺すといったか?このおれを?」・・・・・・すぐに弱々しいビンセントにもどっちゃうんですけどね。


◆◆以下メモ。◆
・世界についてのリルさんの感慨
「デダルスもワタシもプラクシーを捕獲さえ出来れば、すべての謎は解き明かされると思っていた。」
「・・・・そうだろうか。ワタシの目にしてきた無秩序な外の世界。その中にあって、ロムドだけが理論整然としていることこそ不自然なんだ。」
「・・・いや、ロムドも崩れつつある。昏睡状態だったプラクシーの暴走と死。コギトウィルスの増加。代表の孫娘である私への殺害未遂・・・・」


・リルさんに、ビンセント、自分がプラクシーであること、今までおそらく二体のプラクシーを葬ってきたこと、でも記憶がないこと、最初の記憶があるモナド・ドームに行けば何か分かるかもしれないと希望を持っていること、など洗いざらい告白するのでした・・・・・・・・ちょっとそんなにしゃべっていいんすか。


・リルが、デダルス医師から託された「FPこうせん」。プラクシーを構成するアムリタ細胞を死滅させる成分がはいった銃弾ですって。デダルスが停電の間にそのエネルギーで作ったヤツか。


・リルさんは、最初、ビンセントの言うことなど信じていなかったのですが、実際に目の前で変身して、噛ませ犬っぽいプラクシーと闘争する様を目撃。
・ビンセントは、安っぽいヒーローみたいにリルさんを護るように行動し、脳みそなさそうな敵プラクシーと単純などつきあい。うーん、アメコミ風味でちょっと・・・・
・リルは、一度は、ビンセントに狙いを定めるが、結局、ごつい悪そうなヤツをFP弾でやっつけるのでした・・・・・残り一発。