■エルゴプラクシー09輝きの断片/angel's share_s川邊優子c寺岡厳d吉村章g深澤謙二

前回ラストに出てきた金髪長髪の男カズキス・ハウアーに助けられ保護されたビンセント。その男の提示する現実は、ビンセントを絶望につきおとす・・・・・
この回で、この話が「意志と目的」、及び対置される「それによって生じる「束縛」からの自由」についての物語であると感じたのだけどどうでしょう。


全編、カズキスとビンセントの対話、それも、ほぼカズキスの一方的な語りで、構成されていて、カタルシスには欠ける回かも。だけど、プラクシーについてとか、いろいろ興味深いことが語られていて、物語世界の断面が示されていて、惹きつけます。


また、とうとう、ビンセントが変身するところが、直接描写されてます。奇怪な顔形が、お面のように、ずるりと丸ごと脱げてビンセントの顔が出て来る描写があるので、プラクシーは、普通の人体の上に、電気的に何か物質が生成される・・・というカンジなのかな。
変身したカズキスに、ビンセントは問われます。
「もう一度問う、貴様は何の代理人だ?」
「・・・我が名は、エルゴプラクシー・・・・死の代理人である。」


自分が何か奇怪な者であると知ったビンセントは、苦悩します。「俺は人間ではないのか・・・ならば・・・どう生きろと?」
そして、そんなビンセントに、カズキスが残した言葉。
「苦しむがよい。暗闇を彷徨う者は誰しも光を求める。だが光にたどり着いたとき、まぶしさに、目をそらす。痛みすら感じる。・・・・真実もそういうものだ。いつか貴様は、真実という光にその目を焼かれ、永遠の闇を知るだろう・・・・それが裁きだ・・・・」


ラクシー対プラクシーの闘いは、うーん、なんかアメコミのダークヒーローの対決みたいなカンジで・・・ちょと苦手。


◆◆以下メモ。◆
・冒頭、ビンセントを友と呼ぶカズキス・ハウアー
「この世の果てを知るものは、誰しも、みな友だ。」
「君が見た世界、そして君の見る世界、君のその目は・・・死を見つめる。」


・倉庫に居並ぶ武装オートレイブを見て、前回のハロスに戦争を仕掛けていたのは、どうやらカズキスらしいと気が付いたビンセントは、カズキスにどうしてそのようなことをしたのか、と尋ねます。
「争いは常に勝者と敗者。生と死がつきもの。それも分からずして始まった闘いでもあるまい・・・」
「争いは無意味だ・・・だが、滅びるには意味がある。」
「君は見たろ、ハロスの最後・・・セネキスの姿を。」
「なぜ、ハロスに執着する。清められるべき者たちなのに。」


・「相手を滅ぼす為に始まった闘いであるがゆえに滅びるべくして滅びた。滅ぼすべくして滅ぼそうとした」というカズキスの答えに、「だからたたかっていたと?」と問うビンセント。
・カズキスは、長い年月の末、意志と目的を失い、惰性で戦うこと自体が自己目的化した彼等を清めたかったから、戦っていたと語っています。
「まさか!永き眠りの時、取り残された彼等は、その意味を模索した。」
「彼等は見捨てられたのだという真実にたどり着かぬよう、滅ぼし合うことで生きるすべを見いだした。」
「やがて世界が混沌とし、薄弱とした意識の中、死ぬ意味さえ失った。そもそも、彼等の意志が存在するなど考えること自体・・・腹立たしい。忌まわしき分際で・・・」


・ここで転調。(ハロスの人々同様)カズキスもまた、生きる意味と意志を失っているのだと、自分について語り出します。
「いや、許しを請うべきか、わたしも・・・・君に。」
「何もせず、何も出来ず、苦しい・・・(ビンセントがそう感じているように)わたしもそうだった。何も出来ずにいる自分を疎ましく思い、自己というもう一人の己の罵声を浴びながら、眠りの中でも安らぎを得ず、目的もなくただ時をきざみ・・・・それでも・・・生きながらえる苦しみ。」
「君と同じ苦しみをワタシも感じてきた。」


・カズキス。前回、無意識のビンセントに倒されたセネキスとの関係について語り出します。
「君を愛せそうな気がする、わたしがセネキスを愛したように。」
「我がアスラが太陽なら、ハロスは月。わたしとセネキスが、それぞれに対となる塔を築いたのも、いつかくる目覚めの時に、交わした契りの証しとする為・・・・何を言っているかわかるか?」
「嘆きの定めに気づいた私とセネキスは・・それ故に苦しみ、故に揺るぎない愛を得た。」
「しかし、その契りを交わす前に、セネキスは死んだ・・・君が殺した・・・だがよい、定めの前では契りなどはかないもの。むしろ、こうして君に出会えたことを光栄に思う・・・君の力に感謝を」


・カズキスは、ビンセントが、確固とした生きる目的と意志をもってセネキスを殺したのだと思いこんでいます。そんなヤツに、セネキスが殺されたんなら、意志と目的を失った自分はその運命を受け入れるしかないと、言っているんでしょう。
・ところがビンセントは、無意識に行動していた。「おれがころした?そいつを?そんなこと出来るわけはないじゃないか!」なんてまで言っています。


・それを聞き、カズキスは激しい失望に囚われるのでした。そして、Bパートの闘いにつながるんだな。
「からかっているんだな?そうだろ?おねがいだそうだといってくれ。」
「ふっ・・・、知らずに殺したか。わたしのセネキスを。」

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・アスラの街の廃墟を見渡す展望台で、カズキスとビンセントの対話
カズキス「ハロスとアスラは一体。争いによって住民達は死に、ナイツだけが残った。」
ビンセント「じゃあ、ハロスの兵達は?」
カズキス「彼等は虚妄の民。無の存在が、死をもって無に帰ったまで。」
ビンセント「でも彼等は生きていた。命があればヒトは生きていくしかない。」
カズキス「ヒトか・・今は幸福だな。全ての命はついえたのだから」
ビンセント「どうして・・・あなたは主じゃないのか」
カズキス「おろかだな、貴様は。記憶を失い、真実を見る目も失ったか。」


・自分の記憶について問いつめられ、故郷であるモスコで何をしていたか思い出せないことに気が付いたビンセント。ビンセントの正体について、謎めいた会話。意味分かりません。
カズキス「曖昧な記憶でもいままで何の疑いも持たずにいきてこられた。それこそ、貴様が故意に記憶を消したなによりの証拠ではないか。」


ビンセント「記憶を消す?」
カズキス「モスコにいたといったな?成る程、モナドだな。貴様、記憶をわたしたな。だが、ほかのそれを吸収すると、その容量に耐えかね、それも覚悟の上で受け入れた。・・・愛していたんだろう。」
カズキス「だが、愛を示すことで、モナドは貴様を失った。いや、モナドだけではない、貴様も己を失った。我と我が身に刻まれた記憶を消し去ると言うことは、己自信をも失うと言うことだ。」


ビンセント「さっきからなにをいっている?」
カズキス「貴様は裏切り者だといっている。」
ビンセント「裏切り者?おれがいつ?」
カズキス「逃げたのだ。貴様は、プラクシーとして最も恥ずべき手段で。」


ビンセント「プラクシー?」
カズキス「だが、それより許せないのが、記憶を持たぬ貴様が、親愛なるセネキスを殺したと言うことだ!」
カズキス「我、輝きの代理人。カズキス・プラクシー。誇りにかけ、裏切り者を消滅させる。」


・そういえば、七話で、テダルス医師が、リルに、プラクシーについて説明する回で、モスコから強奪してきたプラクシーをモナドラクシーと呼んでいました。