■エルゴプラクシー05召喚/TASOGAREs高木聖子c&d山本沙代g恩田尚之山田正樹

フーディーじいさんを、信じていいのか、単なる虚言癖のある老人なのか、その均衡の危うさが今回の見所かな。前回のどっしり安定したフーディじいさんの描写があるだけに、(全てを悟り、包容力があるように感じられたフーディじいさんを信じたいというワタシの思いもあって)その辺りが、とってもスリリングだった。


結局、Aパートも後半には、フーディじいさんの皮一枚剥いだ本性があらわれてくるのだけど、それを取り巻く「何も出来ない」衆愚たちのいる、この外の世界は、決して、束縛から解放された自由の地ではなく、むしろ、もっとどうしようもない人々の集うところだと分かり、終末感がいや増すところがすごいかも。(民衆の衆愚類型な描写は意図的なんですよね?)


また、この回では、ピノと、絵に才能がある知恵遅れ気味の男の子ティモシー(この辺りは、決して説明せず、描写される絵で語っていて、すごくいさぎよい演出!)の無邪気な遊びのエピソードが、随所に挿入されていて、ロムドから放逐され、気概も希望もなく、フーディーじいさんの流す都合がいい情報にすがりつく回りの大人達との対比が非常に鮮やかに決まっています。
だから、ビンセントを狙う偵察ポッドが、ティモシーの背後に迫るのが暗示される辺りは胸がふさがる思い。そして、ピノが無邪気に、彼の母親に彼が動かなくなったと告げる辺りは、泣けてきます。


一方、(個人的好奇心からの行動で)ドームの外の世界に、ビンセント・ローを探しに来たリル監察官は、警備ポットに狙われたビンセントが崖から落ちるときに、プラクシーが空に登っていくのを目撃します。
リルは、ビンセントを助けようとして、警備ポッドに撃たれ、パワードスーツ風の防護服にキズを負うのでした。動けなくなったリルは、防護服を脱ぎ捨て、ビンセントを助け、大気の感染症に冒されて気を失う・・・・。
「どうなってるんだ。なぜここにプラクシーが・・・なぜだ。なぜおまえがいるところに限って奴が現れる・・・こたえろ・・・おまえは一体何者だ・・・」


◇◇以下メモ◇
・ティモシーが最後に描いていたのは、フーディーじいさんが常々語っていた「いざとなれば、それに乗って逃げ出せばいい」「ウサギ」にまたがった自分とピノ
そして、カメラは上昇し、彼が息絶えた水たまりの塔の下に、なにかの影を暗示して終わるのでした。


・これは、フーディーじいさんが言っている「いざとなれば、センツゥオン・トト・ティ・ティンで脱出する。・・・四百羽のウサギだ・・・」に相当する建造物で今後の伏線でしょうね。


・フーディーじいさんの虚言を取り繕う仕草がとってもいい。


・ティモシーとピノの会話の無邪気さとか、鍵盤ハーモニカの乾いた音が、廃墟描写に非常に効果的。
ティモシー「もう、だからまねすんなって」「ピノも自分の好きな絵を描けよ。」
ピノピノの好きな絵って?」
ティモシー「俺にきくなよ。頭の中、うかんだこと書けばいいんだって。・・いま、すっげー食べたいものとかさ。」
ピノピノ、たべない」
ティモシー「じゃ、目つぶってみ。楽しかったこととか思い出すんだ。・・なんか思い出したらそれを書けばいいよ」
ピノ「・・・んふふ」