■ノエイン もうひとりの君へ21マボロシs浅川美也c森田宏幸d松田清g高田晃

前回の盛り上がりの後の溜めの回。新たな付置をしていて、話が停滞。


ところで、ナゼ、今まで連想しなかったかが不思議なんですが、この物語、神林長平の傑作連作「プリズム」を思い出すなあ。
この小説のテーマは、冒頭「あなたがいて、わたしがいる」に集約されているのだけど、他人に想われる、認識されることで、人間は、世界に存在する、することができるという、世界の認識についての物語でした。
「わたしは想う。だから私はいる。」
「あなたを想う。だからあなたがいる。」
「あなたに想われて、私がいる。」・・だっけ。


神林さんの、論理的な感触の小説群の中でも、現実と仮構が混乱したうえで、「あなたの魂に安らぎあれ」に並んで、抜群に叙情的な物語が展開され、私は大好き。
蛇足ですが、この小説は、「浮遊都市制御体」という、都市の上空、衛星軌道上に浮遊する、神にも等しいスーパーコンピュータが人間存在の全てを管理していて、その制御体に認識されない存在は、この世界に存在しないも同然であり、制御体に認識されてはじめて、人間はこの世界に存在する・・・という魅惑の、論理的強制力を発揮する堅牢な世界の描写から始まっております。
ノエインの、ラクリマ時空界の道具仕立てとテーマに非常に近いかも・・・・とおもっちゃった。


◇以下メモ。
・ハルカとカラスとユウは、シャングリラを放浪。シャングリラは、不確定な世界、つまり幻影だと言ってます。そうすると、誰が確定させて、草原だの、石造りの家並みだのを現出させているのか気になるカンジ。
「目で見えるものなど全て無意味だ。この世界はマボロシだ。」
「ここはおまえ達にとって存在が確定していない世界だからだ」
「この時空はラクリマと並列した時空。おまえ達から見れば未来と言うことになる。」
「未来の可能性の一つだ。」
・対してハルカ「もしこの世界がマボロシでも、ユウも、カラスもここにいるでしょ。二人がここにいるからあたしもここにいるよ。」


・内田女史に接触してきた、黛博士。博士に詰め寄る内田女史。
「量子的な不確定世界を確定させる現象は、人間の特異な量子的構造が原因となる。ヒトの存在が全てを確定させる。ヒトは時空が重ねあわさって出来ている宇宙の根源であり、ネットワークの中心である・・・博士の理論ですよね。」
「それがマジックサークルプロジェクトによって崩壊するかもしれないんですよ。」
出た。これがこの物語のコアですね。


・黛博士は、内田女史に対話して、ハルカがこの事態の中心にいることを知らされます。しかし、そのリアクションが離婚した元妻を呼び寄せて、この函館は危険だから東京に行こう・・・・というのは話の連続性として不自然な気が。


・アトリが、元に戻ったと思ったら、以前のイラツキの半分ぐらいで暴れた後、「こいつらを、護ってやりたいんだよ」なんて言ってます。
聖人状態のアトリと、元々のアトリと、今のアトリの、差分が生じる、物語上の理由があるんでしょうか。
ボロボロになってからの、量子人間のアトリには、観測する人間(想いをかける人間)がおらず、不確定な存在だったのが、ミホという、懐いてきた子供が出来た為に、この変化が訪れたとかって話?


・石造りの家の一室で、ハルカをベッドに寝かせて、カラスとユウの対話。ラクリマ時空界のハルカの運命が初めて語られます。
「まさか、未来のハルカは死んだの?」
「おまえ達の時間軸では10年後だ。彼女は自らそれを望んだ。ラクリマを存在させる為に、身を捧げた。時空間の侵蝕を防ぐ為にハルカは選ばれた。
異なる時空の侵蝕を防ぐ為の壁だ。量子コンピュータで作り出される時空を隔てる壁、リムスの為だ。
ラクリマを救う為、ハルカは人柱になった。オレは、ハルカを見殺しにした・・・・」


・対してハルカ。ポジティブすぎるぞ。
ラクリマの・・・・あたしはわらっていたでしょ?」
ラクリマの私も、カラスのことすきだったんだね。みんなの為ではなくカラスの為に。」


・休んでいる家に侵入してきたノエイン。カラスとユウを吹き飛ばし、二人を助けてくれるなら一緒に行くという、ハルカ。
ハルカはノエインとともにシャングリラの中心に立ちます。
「ハルカ、世界は不幸の連鎖だ。そして、その連鎖の始まりは・・・・キミなんだよ」
・・・ショックを受けて、竜のトルク発動。自分の家をシャングリラに召喚??