■蟲師19天辺の糸s伊丹あきc大地丙太郎d井之川慎太郎g加々美高浩

淡々としているけども全く退屈しない優れた演出、気を配った自然音などの音響効果、なめらかな動画、蟲という卓越した設定で語り直される世界の様相と、誉め続けてきたけど、シリーズも回を重ねる毎に、徐々にそれらの美質が当たり前になり(というか、このクオリティがこれまでの全話に当てはまるというのが驚異!)、些細な欠点に目がいくようになってしまう。
この話も、普通のTVアニメシリーズではあんまりないクオリティを維持しています。
維持していますが、そんなさもしい心の狭いワタクシは、今回の話で、物語、ドラマとしての厚みがいまいちかな、と思ったのデシタ。


いまどき、跡継ぎ息子が、女中を好きになり、父親に反対されるって骨格の定型話を表面だけなぞられてもキツイカンジ。
子守のフキと跡継ぎ息子の愛のカタチが全く描写されていないことがそれに拍車をかけております。これがこの話のキモだとおもったんだけど、お互いに星空を見上げているという場面だけ提示されても・・・・それが二人にとって特別なものだったってのが、描写から抜けている気が。
あー、了見が狭い奴だ、俺って。


しかし、光脈筋の天辺に蟲が浮遊し、餌に困ると地上に触手を伸ばしてくると言う設定、浮遊する様が帚星のように見え、その触手が天から伸びた糸のように見えるという、ビジュアルは非常に好きです。


それに触れてしまうフキは、うっかりすぎ。そのうっかりさんなところを、別に描写していたらポイント高かったかも。それで、跡継ぎ息子が好きになるエピソードとか加えてさ。
フキが、ぴょーんと跳ね上げられる描写が2回あるけど、ともに動画的に気持ちがいい感じがした。


◇以下メモ。
・フキは、天辺草に、ひょいとほうり上げられて、人間と蟲との中間の存在になって山の木の上をウロウロしているところをギンコに助けられるのでした。
・元々フキと結婚しようとしていた跡継ぎ息子。跡継ぎ息子の父に反対されてフキは肩身の狭い想いをし、しかも、息子もちょっと違うフキを恥じてしまう。
蟲の気を浴びすぎたフキは、この世に寄る辺を失って、段々影が薄くなり、消えてしまうのでした。


・それをつなぎ止めるのは、息子のフキを思う気持ち。気持ちなんだが、それは空間を相手に食事を取る振りをしたり、祝言をあげたり、会話する振りをしたりすることなのかな・・・・・という疑問。というか、見えないけどそこにいるんでしょうかね。でも、浮かびあがってなかなか下におりてこれないはずだし、息子も認識できないけど、いないと話は成立しないからいることに決定。


・かなりどうでもいいんですが、この天辺草、衛星軌道上を浮遊して、長い触手状のものを垂らすってことで、ザックトレーガーを連想した。あの話で、ワタクシが一番好きなこの巨大構造物のシークエンスが、映画版では、全面カットされて失望したことを思い出したり。