■蟲師08海境よりs山田由香c平松禎史d成田歳法g田中将賀加々美高浩馬越嘉彦色彩設計岡野国治

海は異界との境界であり、何かがやってきて去っていく・・・という話。民俗学っぽい方向にはながれず、自然現象として淡々と状況を描いていて、面白い。この回は、ドラマ性が高いかな。多弁じゃなくて場面で語ろうとする演出は相変わらずいいです。


◇以下メモ。
・都会で問屋の経営者から首にされ、故郷の漁師町を目指して都落ちしていく夫婦。妻は、経営者の次女らしいのだが、わがままに育って、漁師町を魚臭いと難じる。夫は、そんな妻をおまえが付いてきたのは驚きだと、とげとげしく応える。
そんな二人が、小舟での海峡越えにあたり、深い霧の中、大量のなにか白くて長いものの群れが、妻の船を連れ去っていく・・・。夫は、帰らぬ妻を待ちながら3年間岸辺にぼんやりとすわっている・・・という発端。


・喪失感を抱きながら、漁村にとけ込もうとし始める男。恋人も出来て、妻が消えてからちょうど3年。
・この恋人の女の子が、なんだか物語的にあざといカンジ。


・当時と同じ霧が立ちこめてきて、ギンコと一緒に沖にこぎ出す男。彼等が遭遇するのは、かって妻の乗っていた船。
・船には、妻らしき人物が横たわっている。恐る恐るかけられた布をめくる・・・・・妻は生きていた。この時点で三角関係が気になって仕方がなくなりますが、まあ、この物語類型の結末は、生か死かどっちかの方向の二択ですものね。


・この話は、苦いハッピィエンド。妻の死を噛みしめながら、男は、淡々と現実を受け止め、漁村で人生を歩んでいく・・・・・・
打ち上げられた着物。「・・・・いいさ、もう持ち主はいないんだ・・」灰色の海辺で立ちつくす男と去っていくギンコ。音楽も相まって非常にいいかんじのラストシーン。


・今回の蟲は、海と陸に分かれて生育し、時が来ると沿岸で邂逅。1000日後に再び同じ海域へ戻り、一体の蟲となる。ラスト近くで空へ登っていくのが印象的・・・・人々には見えないけれども。


・Bパート冒頭の、男が霧が立ちこめた、べた凪の海に近寄っていく微妙な表情とか、ギンコが小舟を漕ぐ作画とか、力が入っていて印象に残りました。