エウレカセブン28メメントモリs野村祐一c難波日登志d佐藤育郎g伊藤秀樹Mg金子秀一

前回から、間髪入れずにレイが襲ってきます。
冒頭から説明されるように、前回の「この化け物」という、エウレカに対するレイの吐き捨ては、軍事演習の中でエウレカに起因する「セブン・スゥエルズ?現象」の発光により、子供が産めない身体になったため。
完全に私怨ですが、「大勢の人間を殺した化け物」とか、「世界を滅ぼす化け物」という説明よりは、成る程、一人の人間を、骨の髄まで憎いと思う動機としては、地に足がついて説得力があります。この作品らしい。


しかし、これはこれで、物語的にはありがちな気もします。
ところが、この後の、レイの、(感情にまかせてめちゃくちゃにしたとおぼしき部屋のシーンや、猪突猛進で憎しみに我を失っていたりする様子など)狭い感情の器を描写する様子を見ていると、さらにその憎しみの動機に説得力が生まれて来るという、例のごとく意地悪な作りになっている気がする。
この作品は、いつも、いい人を表面的に描写するんじゃなくて、(たとえばそのいい人としての性質に)どこか限界がある人間性をうまくすくい取った行動をとらせていて、非常に巧みだと思います。


例えば、この回でも、タルホは、単純にホランドが好きで助けたいと一心に思っている人ではなく、昔ホランドと関係があった(とおぼしき)レントンの姉を思い、レントンからホランドに輸血するのに(ホランドが死にそうで、そんなことを言っている場合じゃないのに)ひどく抵抗を感じるのです。


あと、この回では、レントンは、何もできない。
それにもかかわらず、「ぼくがチャールズさんのところに留まっていたら、こんな事にならず、チャールズさんたちを幸せにできたのですか!」なんて、ひよわなセリフを吐いています。
これを聞いてレイは、ハッとした後、よく考えて憎しみを増幅させるのですが、そりゃそうだ。
肉体から発生した感情と、何もできない者が(心からのものであったにせよ)状況から発生させたヒューマニズムでは、自ずと強度は明かだ。後者は前者の燃料にしかならない。


この回の縦糸の一つとして、レントンがニルバーシュのそばで発見したチャールズさんの指輪のエピソードがいくつか挿入されるんだけど、レイが、破壊された白鳥号の紅蓮に包まれたコクピットの中、吹き飛ばされた自分の腕に指輪を見つけて、にじり寄っていくエピソードは壮絶。しかもたどり着く寸前に白鳥号が爆発するしで容赦ない。