■稗田のモノ語り〜魔障ヶ岳〜妖怪ハンター_諸星大二郎_講談社刊05年11月4日第一版

久しぶりの稗田礼次郎、妖怪ハンターモノの新刊。2003年からメフェストの連載だそうで、全く視野にはいっておらず、意表をつかれた。最近でた諸怪志異の4巻とならんで、非常にうれしい。
考古学の調査で、修験道の厳しい山並みの中の遺跡を調査に来た稗田礼次郎と、居合わせることになった3人の運命について。
本作は、名前の象徴性についての物語であり、モノにうかつな名前をつけるなという話。名前は命名者の運命をも決定してしまうのだと。
この物語では、人の名を付けたモノは姿をくらまし、神の名を付けたモノは、消え去り、残ったのは、魔の名をつけたものだけだった、そして、命名者は皆滅んだ・・・・・という、稗田礼次郎の感慨に対する、モノの母体の回答は、どんな名前をつけようと生かしていくのはその命名者たちです。モノ自体はわるくない。
この物語のラストにもいささか類型的に表現されているように、なんか現代社会っておかしいんじゃないの?という、諸星さんの意見表明ですかねぇ。

ラストの、民俗世界に侵入する現代社会については、その類型性にちょっと残念なカンジがしましたけども、ことごとく、長く受け継がれてきた風俗習慣を希釈化、あるいは放棄する様に要請する、現代の大衆資本主義社会のありあさまに非常な違和感を抱くわたくしの今日この頃にして、非常に共感をおぼえるものでした。

本作で、諸星さんの描く異形の混沌のイメージは、生物都市の頃からなんか一貫していて伏流水のように、時々あらわれるんだなぁとおもいました。