■UN-GO_09海勝麟六の犯罪〜坂口安吾「明治開化 安吾捕物帖"冷笑鬼""赤罠"」より〜s會川昇c和田純一d京極尚彦g竹知仁美冨澤佳也乃中山初絵稲吉朝子糸島雅彦

◆(原作故にこの物語に元来内在されている)人工的な合理、整合を求める推理小説的結構と、前々回からクローズアップされて来た、このアニメーションシリーズのオリジナルな仕掛け、不合理の極みである「ヒトの言葉を現実化する」神のごとき能力。


◇この回に至り、この二つの相容れない物語駆動力が相克する展開になってきたことが明示された。(「ヒトの言葉を現実化する」ことに説得力を持たせるエピソードが、TVシリーズでは省かれたのが気に入らないが)かなり興味深い構図だ。


◆原作とされる「安吾捕物帖」もつまみ読みしてみたけれども、おおよそ古くさい推理小説にすぎず、このアニメーションシリーズから見てみれば、「素材」にすぎないと見ていいだろう。


◇はっきり言って、原作とされるものをそのまま現代に通用するエンタテイメントのシナリオにするのは無理だと思った。(実際「推理小説的な構造」は原作を反映しているようだが、それ以外のキャラクター、人間関係、因縁など、ほぼ完全にオリジナル。)


◇その現代的でない、古くさくも人工的な推理小説的世界認識を、ざっくりと切り取ってきて、まさに「世界構造」として提示する。ここに、このアニメーションシリーズ最大の作劇的な仕掛けがある。


◇「古くさい推理小説が世界を見ている歪んで人工的な視点」を「そもそも世界がそのように作られている」という話として大きく拡張しているんですよ、きっと。脚本家としては、企画をムチャぶりされて考え抜いた末の素晴らしい曲解だと思う。


◆ただ、古くさい人工的な推理小説的な構造を「世界構造」としてとりだすのはいいが、そのままでは物語の風呂敷は広げられない。そこで、昔ながらの推理小説ってのが、そもそも人工的な閉じた世間、人間関係、因果で成立している「構造物」であることを逆手にとり、その「構造物」を創造する存在を仮定してみたんじゃないかなあ。


◇「この物語世界は、そもそも(推理小説という)構造物にすぎない」という前提に立てば、別天王(べってんのう)などという、その存在の原理、理由をすっとばして説明しない不合理な存在を持ってくると言うのも大いにありだと思う。


◇この大きく広げた風呂敷をどのようにするのかが、すごく楽しみだ。実際どーすんのよ、これ!


◆◆以下メモ◆◆
「別天王を使えばどんな嘘でも真実にできる。海勝がそんなものに頼るやつだったとはな!」(新十郎)