■ミチコとハッチン09恋したショコラッチガールs宇治田隆史c増井壮一d恒松圭g森下博光

ミチコとハッチン
◆シナリオ、作画と演出、音楽、声優の演技など渾然一体となって調和した、これも秀作回。特にシナリオがいいなあ。
◇シナリオの宇治田さんという方は、私はこのシリーズで初めて存じ上げたのだけど、ネットを調べるとどうも実写畑のヒトらしい。シリーズ通してクオリティが高くてすごいですね。


◆さて、この回は、オトナになりたいと背伸びしている女の子の、その思いとは逆にその内側で初々しく空回りして理想化され、現実と遊離してしまっている「恋愛妄想」が、すれたオトナからすればママゴトにしか見えないという寂しい現実。


◇これを、画面中に満ちる多様で豊穣な背景音楽とSE(特に街の喧噪とかサーカスの公演とか)のリアリティ、女の子の「普段着の呑気さ」を表現する声優演技、そしてそれと裏腹の「オトナとの世界の断絶」に自己実現への焦燥感を募らせてゆくエピソード群とで、実に現実感のある形で演出しています。


◇この回は、可愛らしくて、ユーモラスで、切実感があり、乾いている。素晴らしい。


◆特に、「コドモの空回り恋愛」とそれに対する「オトナの現実」とのギャップを、「子供自身の言動」を大人びて演出し、なおかつその「恋愛対象の大人」を全く魅力的に見せないように演出(・・・ですよね?あえて魅力的に聞こえない演技してんですよね??)することで、極大化するワザが効いています。


◇この「「恋愛対象の大人」を全く魅力的に見せない」という演出って、なかなか難しいのではないかしら。
これによってそれまで「おませ」どころか、「世間ズレ」した女の子に見えていたのに、突如、子供の子供らしさが浮かび上がってきて、そのいじらしさ、可愛らしさが筆舌に尽くしがたくなるのですよ。


◆キャラクター的には、サーカスの女の子リタの安定した人格かと思えばコドモらしく駄々をこねたりする、コドモとオトナを行き来する、そのアンバランスな様が実に可愛らしい。
リタと彼女に懸想する男の子、そしてハッチンとで醸し出される「コドモの世間」的なやりとりもとっても楽しい。


◆ところで、このサーカスの女の子の、のほほんとした声優演技がまた上手い。リタ役の吉野紗香さんって(このシリーズのキャスティングの例に漏れず)やっぱり俳優さんみたいなのだけど、前回のアフロ女刑事役とチンピラ役の人々の「超微妙な演技」を聞いて(話の続きについて)暗澹たる気持ちになった後だと実に清々しいです。


◆◆以下メモ◆◆
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・リタは、Aパート中盤。願い事を叶えるという「血の涙を流すマリア像」について。
「超ホラーでうける」
「うちらコドモじゃないんだよ。そんな夢見たいな話、ナンセンスだと思う。」


・そして、あこがれのヒトの恋人を遠望して落胆しつつ
「だって世界はもっとリアリズムだもん。」


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・しかし、Bパート中盤、「はやく・・・オトナになりたいんよ。」と焦燥感に駆られたリタは、「マリア像を取り替え可能とするオトナ」に涙を流して異を唱える。
「願いを叶えるマリア像は大体不可能だと考えるコドモ」が露頭。