■キャシャーン Sins 09滅びの谷に咲く花s上代務c&d木村延景g青木哲朗レイアウトg補佐西井輝実馬場充子中村章子総g馬越嘉彦

キャシャーン Sins 
◆荒廃した、しかし美しい花に溢れた瑞々しい谷での可愛らし少女型ロボットの邪心の無い戯れ。
しかし、物語の作り手は、その天国のように描写される谷での彼女のほほえましい行動が、死に覆い尽くされた「ロボットの墓場」で死者に花を手向ける行為であるとまず語り、やがて、彼女そのものも狂っていると語りをすすめます。


◇だけど、狂ってはいるが健気で時折正気を見せる彼女の無邪気さを、我々は(その行く末を心配しながらも)微笑ましく感じ、そこに安心を見つけようとします。そうしたら、なんということでしょう、終盤に不意を突かれてしまいました。


◇少女の空虚な瞳(最初は可愛らしく見えていた瞳が、話も中盤に進むと空洞に見えてくる)に映っているものは死せる女主人であり、女主人の粗末な依代に、それが生きているかのように彼女が語りかけるのを見る時、我々は言葉を失うしかない。


◆この回は、美しい背景美術と少女の無邪気さが醸し出す安らぎ感を最大限にアピールした上で、シビアな真実を小出しにして徐々に悲劇性を深めていく語り口が素晴らしいです。


◇美しい背景のビジュアルと微笑ましい子供の戯れが、やがて凄惨極まる死に塗り込められた袋小路での出来事であることがわかる時、私はその行き止まりで途方に暮れてしまうのでした。


◆この全く救いのない話を、さらに世界と自分の運命に絶望した悪漢ロボットの嗚咽でトドメを刺すように締めるのも素晴らしすぎる。
少女ロボの真相を知ったあとの、キャシャーンとリューズの対話もお通夜に並んでいるように沈鬱だし(だけど引き込まれる)、なんて素晴らしい。奇跡のようなシリーズだなあ。


◆◆以下メモ◆◆
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・狂った少女型ロボットが実は・・・
「ニコ・・・ルナの世話をしていたロボット。(・・・)ここに捨てられたの?まさか、ルナが殺された時からずっと・・・?」(リューズ)


「ニコもあの時近くにいた。・・・私の姉さんと一緒に。あんたが、ルナを殺したから、ニコもこんな事に・・・」(リューズ)


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・この世界のロボ達の間には、「キャシャーンを喰らえば滅びが止まる」意外の新たな噂が流れているみたいです。
「それじゃ・・・あの噂、・・ウソだったのか?どこかにルナって女がいて、ロボットにも人間にも命を・・分け与えているっていう噂は?」
「・・だけどよ。どこにいるかもわからねえ女を捜すより、デュオが作った軍団に加わった方が利口だとは思わねえか。・・・だろう!」


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キャシャーンのスタンスが定まった?
「僕のせいで世界が滅びに向かっているのならば、僕にはその滅びを止める責任がある。ルナを探し出せば、滅びを止める答えが・・見つかるのかも知れない。」(キャシャーン