■キャシャーン Sins 03苦悩の果てにs大和屋暁c&d峰達也g西位輝実総g馬越嘉彦

◇素晴らしい。この回も秀作回。
キャシャーンの嗚咽と苦悩と沈黙、ゲストキャラである「人間」アコーズさんのキャシャーンへの語りかけ(キャシャーンは寡黙なのでほとんどモノローグだよ)でつなぐ、静かで淡々として内省的な低温演出。そして、あくまでも基調は死へのモーメント。
だけど、調和のとれた鬱屈とでもいうのかな、どうしようもない陰々滅々なのに、見終わった感じはかなり爽やかなのに驚きます。


◆この回は、チンピラ風だけど人格の濃い、楽天的な「人間」との問答で、(前回、「死を受け入れたロボット達」を皆殺しにした)キャシャーンの強い自己否定の気持ちがほぐれる・・・・というプロットなのだけど、いやあ、このシリーズで初めて登場する「人間」であるアコーズさんのキャラクター造形が素晴らしい。
この回が素晴らしいのは、ひとえにアコーズさんの秀逸なキャラクター造形と表情演出によるのではないかしら。


◆生真面目で融通が利かないキャシャーンに対して、ちゃらんぽらんだけど人生経験豊富で頼りになるアニキが救いの手を差し伸べるみたいな構図。


◇だけど、この回は、この対照的な二人が実は根は同じ(辛いことから逃げ、結論を出せず、鬱々としている)であることをきっと演出していますよね。
だから、苦悩の一つの解決方法として、キャシャーンは自殺にも似た方法で死に向かいあって「落とし前」をつけようとする。アコーズは、自らの寿命と、とうとう正面から向かい合う。


キャシャーンは、しかし運命のいたずらで生き残ってしまった。(まあ、キャラ配置的には必然なのだけれども。)
生き残ったキャシャーンは、アコーズとの出会いで成長し、「わからんものはわからん。無駄な悩みはせずにただ生きてみよう」という彼の処世をきっと思いだしていくのでしょう。


◆冒頭で書いたように、ワタシが(この鬱々とした雰囲気の中で)この回に爽やかさを感じたのは、(今後の展開に繋がるかは分からないけど)キャシャーンの凝縮された鬱屈した感情の一部がアコーズとの出会いを通じて昇華された(成仏した)ように感じられたからじゃあ、ないでしょうか。


「ま、こういうこった。おれは最初から死にかけていたワケだ。不思議だなあ。ずっと逃げ回っていたオレが、最後の最後にお前にちょっかい出すなんてな。・・キャシャーン、オレは望んでいたのかも知れない。・・オレは、誰かに伝えたかったのかも知れない。・・オレは死に場所を探していた。散々悪事を重ねてきたが、ひとりで死ぬにはちと、度胸が足りなかったんだよ。・・・おかしいだろ。死ぬのに度胸だってよ。・・キャシャーン、安心しろよ、人生わかんねえことだらけだぜ。」(アコーズ)


◆◆以下メモ◆◆
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・アコーズ、キャシャーンに捕獲してもらったトカゲを食べながら。
「同情するよ。・・食うことも飲むことも女を抱くことも必要のない・・ロボット諸君を。」(人間アコーズ)
「さっきは、人間は効率が悪いと嘆いてなかったか?」(キャシャーン
「人間てのは常に矛盾してんだ。理屈が必要の無い時ぐらい・・素直に楽しめばいい。・・・それで。いいんだ。」(人間アコーズ)


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キャシャーンが、「死を受け入れたロボット達」を皆殺しにしたことを陰々と想っていると。
「そんなに思い詰めて楽しいのかぁ?やっちまったもんはしょうがねえだろ。ウジウジ悩んでたって、どうなるもんでもないと思うがな。」(人間アコーズ)
「僕は罪を犯したんだ・・・」(キャシャーン
「オレだってそうだ。それが・・なんだっていうんだ。・・間違いは誰にでも起こる。反省すればその罪は消えるのか?・・・よかったじゃなぇか。今の世界には法律も裁判もねえ。・・お前を裁く奴なんて、どこにもいねえんじゃないのか。へっ、何を思い詰める必要があんだか。」(人間アコーズ)
「わからないんだ。僕がいることによって周囲に破壊と不幸を振りまく。・・僕がいるだけで、みんな死んでいく。・・・・僕は一体、なんなんだ・・・」(キャシャーン
「へぇ・・・・そんなの知るかよ。オレはメシ食って、クソして寝るだけさ。」(人間アコーズ)


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キャシャーン、アコーズが「死ぬことを受け入れたロボット達」に会おうと思った動機を尋ねる。
「・・・アコーズは何故彼らに会おうと思ったんだ?」(キャシャーン
「顔を・・・見たくてな。・・死ぬことを受け入れた奴らがどんな面をしているのか、ひとめ見てみたかった。」(アコーズ)
「・・・オレはずっと逃げてきた。むかしからちっちぇ悪事を繰り返してきたあげく、たくさんの奴らの怨みや憎しみや自分の取るべき責任から逃げ出したんだ。」(アコーズ)


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・アコーズの叫び。
「未来永劫続くかと思われた文明は、滅びによって消え去った。秩序にあぐらをかいていた奴らはとっくの昔に死に絶えた。力ある奴は、より力のある奴に駆逐された。・・・逃げて逃げ続けてきたオレは、・・オレの行き着く先は一体どこなんだ。オレはどこに逃げてきたんだ。・・何のために?生きるためか。何のために生きるんだ?逃げるためか。・・そんなオレは一体何なんだ。・・・そんなもん、誰にもわかりやしないんだよ。」(アコーズ)



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キャシャーン!おまえは死に神なんかじゃねぇ。少なくとも、おれは死ななかったもんな。じゃあな!」(アコーズ)
と言っているそばから!


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「ま、こういうこった。おれは最初から死にかけていたワケだ。不思議だなあ。ずっと逃げ回っていたオレが、最後の最後にお前にちょっかい出すなんてな。・・キャシャーン、オレは望んでいたのかも知れない。・・オレは、誰かに伝えたかったのかも知れない。・・オレは死に場所を探していた。散々悪事を重ねてきたが、ひとりで死ぬにはちと、度胸が足りなかったんだよ。・・おかしいだろ。死ぬのに度胸だってよ。・・キャシャーン、安心しろよ、人生わかんねえことだらけだぜ。」(アコーズ)