■カイバ11まわるファンs&c湯浅政明d久保まさひこg牧原亮太郎

◆記憶の王ワープを倒し、世界を手中にしたポポ。
しかし、ポポの大事にしていた幼い日の心象風景からは、自ら捏造した友達が去り、大事にしていたと思っていた事実の親友もいなくなる。


◇物理的な実在であり、心のよすがとしていた母親の記憶チップも、天下を手中にした有頂天に我を忘れた浅はかさで、もはやいずことも知れぬ黄泉へ消えて行った。


◇記憶を消去され、ただの虚ろな人形と化した親友を従え、しかしポポは一人きり。自分の行動動機を見つめて支えてくれたヒトの<脳内で再生される記憶>がそれぞれのヒトから消えた時、ポポはもう暴君となるしかない・・・・


◆第8話のアバンで演出された「捏造したネイロの記憶」、すなわち幼少のポポと親友チェキとネイロの楽しげな3人の子供の会話の記憶から、「ポポ本来の記憶」では、仮構だった幼少のネイロが消え、そしてとうとう確固たる「事実の友達」も消えるという演出。


◇「記憶の不確実な世界」をテーマとした本作にあって、象徴的で効果的な演出だったんじゃないでしょうか。
ひとりきりで再生されるようになった「幼いポポの稚気溢れる言明」が明るい調子と裏腹に実にもの悲しく、私には深く印象にのこりました。ヨカッタ。


◇ところで、個人的にはポポがチェキにこれほどこだわりがあったとは感じられていなかったので意外なシナリオではありました。


◆また、チェキの記憶が消滅していることに気づき、母親の記憶チップを失ったあとのポポの取り乱し具合が素晴らしい


◇我を失いハイテンションで、むちゃくちゃな暴君的な振る舞いを始めるポポ。自分のマントを踏んで倒れる描写など、声優さんの演技もあって「物狂い」の描写が非常に細やかで素晴らしい。
躁病気味に騒ぎながら気分爽快に椅子に座ってグルグル回っているところを、サテに記憶チップを焼かれて動かなくなるところの、動と静の対比などもヨカッタ。


◆◆以下メモ◆◆
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「チェキ!思い出せ!チェキ!オレをわすれるな・・・。オレを、・・ひとりにしないでくれ・・・」(ポポ)


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・ポポの「反乱の腹心」サテの弟キチから語られる真相
「僕らは水辺に倒れていた君とカイバを運んだ。カイバは記憶を失ったまま船に。」(キチ)


「君(ネイロ)の記憶は僕らが細工、改竄した。しかし、改竄される前の記憶コピーはひょーひょーに入れたんだ。彼女が君の本当の記憶を持っている。君に戻したい。」(キチ)
「・・・それが正解。あたしはいらない?・・・あたしなんか・・・」(ネイロ)
「確かに、君とひょーひょーは今となっては別の人格。オレは二人の人間を作り出してしまったんだ・・・」(キチ)


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・記憶を取り戻したカイバ=「真のワープ」が語る。
「宮殿に戻らなければ。私を陥れた物が玉座についている。(・・・)記憶が戻った・・全て。・・・私はワープ。・・この醜い世界の王だ。」


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・ポポの、母親の想い出で、幼少のネイロとその両親と道ばたであったところ。
・ポポは、「にっぽ食べたい」とダダをこねて家路を急ぐのだが、小さな子供に引っ張られるオトナが腰をかがめて引きずられるという絵が、ヨカッタ。


・ポポと母親の回想エピソードは泣かせのワザが若干空回り。
「母さん・・・僕いると大変?」(幼少のポポ)
「母さんは、ポポがいないと駄目なんよ。」(ポポも母親)


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・惑星に接近してくる、全ての記憶を飲み尽くすという伝説の植物「カイバ」に対して、暴君たるポポは述べる。
「よく聴けぇ、みんな!・・我々は全て、アイツに呑み込まれる路を選ぶ。・・・一つになるんだよ。・・これは、ひとつの進化だ。我々ひとりひとりが何億という細胞の集まりであるように、我々全ての記憶が一つになる。・・・ひとつの想い。我々イッソー団にとっては宿願ではないか!これは太古から人類が望んだ進化だ。」


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・乱心したポポに対するサテの見限りで、彼女に記憶チップを焼かれるポポ。そのサテも、復活したジャクチュウ氏にチップを焼かれる。
・3人の年老いたワープは主導権を取り戻し、ポポの記憶すら改竄し、手駒として利用していたと語る。
「何回もお前は俺たちに刃向かおうとし、修正された。旧宮殿を見つけるたび、お前は大袈裟に驚いていたよ。」


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・「真のワープ」(=カイバ)ではなく、「現在の為政者であるワープ」(胸に穴が空いていない)は、年老いたワープ達のチップを焼き、都市に電解雲を流し込む。そして、「この星のすべての歴史、生まれ死んでいく全てのヒトの」記憶のタンクを破壊し、宇宙へ拡散させるのでした・・・・・
「最後に・・・ガゲツの記憶など必要ないっ・・・」