■「紅」12われ存在りs&c&d松尾衡g石井久美

◆最終回。
◆やっぱり自然なダイアローグの積み重ねと、声と作画合わせての仕草演出、更に格闘作画は素晴らしいのだけど、最終回の宿命、「着地用の物語」が前面に出てきた途端、なんだか色褪せて感じてしまったよう。ごめんなさい。
今までが毎回、圧倒的に素晴らしかっただけに、この最終回はもったいないと思ってしまった。


◆個人的には、最終回に着地点として用意されていた中心テーマ「「家の伝統」に虐げられた女の自立の物語」が余りにも古くさく感じてしまって・・・・話の組み立てに現代性もないし、かといってそのテーマを支える舞台背景(この場合は九鳳院家ですね)に納得性のある厚み(キャラや歴史の存在感)が十分にあるわけでもないし、物語性が豊かってワケでもないしさ。


◇紫と九鳳院家当主の父達による「家の掟に従うか、個として自立を取るか」みたいなディスカッションがこの回のクライマックスというのが、とってもこのシリーズらしいのだけど、「女の自立」について、紫に語らせれば語らせるほど、虚ろに響いちゃった。ごめん。


◆また、紫が「家を出る」という選択ではなく「家に留まって「家のしきたり」と闘う」という結末は、これまで当主の父の悩む様子を描写してきただけに、一概に「無し」とは言えないけど、この回冒頭、悪のドグマの権化のように語っていた当主さまが、ラストで紫にデレデレになるに至る、こころとその表出の変化を上手に描くには難しいなぁと、思ってしまいました。


◆しかし、真九郎のヘタレたこころや優柔不断さ、精神的な鈍感さを最後まで徹底したのは素晴らしい。
彼の素朴な倫理観と、感情が優越する論理性の無さが、とてもリアリティを持って描けていたように思いました。