■「紅」08自愛と臆病とs川嶋澄乃c松尾衡山崎みつえd山崎みつえgふくだのりゆき小松香苗

◇1話遅れ。
◆近所の神社への七五三のお参りを、じっくり丁寧な、何でもない会話の積み上げによって描く手つきが相変わらず素晴らしい。仕草作画もやっぱりよかった。


◆このダイアローグの素晴らしさは、そうした何事も起きない日常ドラマを描く上で威力を発揮するのはもちろん、荒事だとか非日常的な状況にリアリティを持たせる上でもとっても有効に機能している気がするな。


◇たとえば、紫の居場所を突き止め、張り込みを行っている男達を、のんきな会話と行動の積み重ねでユーモラスに演出するところ。
これがあるから、ラストの彼らの猛々しい豹変ぶりが、良くある「単なるモブなチンピラによる脅し」以上に、際だって効果的に印象にのこるんじゃないかしら。


◇また、紫の七五三についての真九郎の電話を受けている紅香さんが、実は「椅子に縛られて目隠しをされた男」に銃を突きつけていたりしている、その異常な状況が、世間話みたいに自然な彼女との対話の流れの中に置かれて、奇妙なユーモアを醸しだしているところも実によかった。


◆しかし、「不自然な、あるいは非日常な状況」を、「極めて自然な会話」で支えてリアリティを与えるという、このシリーズの美質は、九鳳院家のヒトビトの前では、ちょっと分が悪いですぜ。


◇この時代劇がかったアナクロな設定の「大財閥」な一族にリアリティを与えるのに、お父様とお祖父様とご長男の浮世離れした口調と会話の内容では、どーにも座りがわるいんです。。。
いったいどーしたらいーんだ。


◆◆以下メモ◆◆
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・謎のキーワード<奥の院>について、九鳳院家の当主蓮丈と妻との対話。
「紫は東京にいたのですか?」(妻)
「ああ、東京は嫌悪を催すところではあるが、他界とも言える場所だ。そこでの生活は、何かしらの形成の役にはたとう・・・」(蓮丈)
「何かしらの形成が奥の院の女には必要ですか?」(妻)
「そなたは、奥の院の女に同情したことはあるのかな?」(蓮丈)
「同情してはならない存在だと教えられて何ができます?」(妻)


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・九鳳院家について、当主蓮丈とその父との対話。
「ほとほと参る話だな。」(祖父)
「申し訳ございません。」(当主、蓮丈)
「・・蓮丈、ソウジュに未だ思いはあるかなきか?」(祖父)
「・・・ありません。」(当主、蓮丈)
「ふん、紫も世間から身を隠す立場の者。ましてや我らのこと、どこからも漏れてはならん。」(祖父)
「万が一にも、表沙汰になることはございません。その点はお心安く・・・」(当主、蓮丈)


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・真九郎の幼なじみの情報屋、銀子が九鳳院について調べた。
「間違いない。九鳳院の家に、紫なんて女の子はいないわ。」
「九鳳院は世界屈指の大財閥。・・なんだってやる家かもしれない。(・・)貴方にはとても太刀打ちできない。・・ていうか、貴方の存在すら無かったことにされちゃうかもね。」
「ちなみに現在の当主は九鳳院蓮丈。その当主の子供は男の子が二人よ。」