■神霊狩/GHOST HOUND 22Passage−道程/暗黙知の次元−s小中千昭c&d中村隆太郎g植田実岡真里子g補佐石井明治中村光宣小谷杏子沼田誠也

◆台風の接近する空模様を思いっきりデフォルメした「異界」的舞台描写に、なかなかの疾走感ある物語運び。
今までの抑制しすぎの平板な語り口をバネに、いよいよ伏線を貫いて物語的な爆発が!と、絶賛しようとおもったら・・・・・ええっ、えーっ・・・最終回??


◇特に、この回のいきなりの「大団円」的終盤に、なんだか目眩を覚えてしまいました。
いやさ、ハッピーエンドは悪くないし、主人公達に幸せになってもらいたいけどさ、登場人物達一同が一つところに集合し、みんなで事件が無事に収まって良かったね!的笑顔で微笑まれても・・・・・ねえ、ワタシは絶句してしまいました。ありえん!


◇これまで散々、世界設定的深みを強調してきた脚本が、最後に来て「実はジュブナイルなので、物語としてはこんなもんです!」と、言っているようなものじゃ・・・・。


◇薄々、「社会に直面して身動きできない社会的経験の足りない少年少女が、自分たちの持てる知恵と経験で困難に立ち向かっていく」的な展開になってきたなー、とは思っていたのだけど、今時、まさかこんな締め方をするとは・・・


◆しかも、今までの数々の思わせぶり、衒学的匂わせを、すべて!!放置ですよ。なんだろう、この潔さ。


◇そりゃあ、「かもしれない」という文脈で全てを説明してきたかもしれないけど、じゃあ結局なんだったのかという結語が欲しいと思ってしまうのは、「なんでも分かり易く語って欲しい」と望む衆愚の欲望でしょうかねえ・・・。


◇いんや!この物語に限って言えば、それは正しい要望でしょう。だって、超自然的な、「現実と肉離れした」世界構造の「可能性」は語られたけども、断言されていないし、しかも推論可能なように論理的にキッチリした形で語られていないじゃないですか。


◇この辺が、例えば、同じ解釈を視聴者に委ねる趣向の難解な作品とはいえ、「エルゴプラクシー」とは違うところじゃないかしら。


◆せめて、肝心のバイオイドが水天町のヒトビトや幽界(かくりよ)に及ぼした影響とか、神霊という存在が息づいている「幽界(かくりよ)」とは結局なんだったのだとか、太郎が幽界(かくりよ)で出会った「導く存在」とはだれだったのかとか、この辺りの基本はキッチリ断言して説明してほしかったよう。


◇あと、人間関係も消化不良!
太郎の母親の精神は大丈夫なのかとか、宗教にはまった中島くんのお母さんと家庭を顧みないお父さんの葛藤とか、大神くんとお母さんの関係は描かれたけれども亡き父との関係は!とか、スナークの存在意義とか!矢崎もとい、大神くんの父や母、都の父達の学生時代の交友関係とか!


◇殆どのことは、確かに今までの物語で語られてきたけど、多くは非常に印象が薄く言及されていて、もっと深い物語があるとばかり思っていて・・・・


◆総括。
◇深みを感じさせる硬くて重い語り口と素材の物語でありながら、この「物語的」肩すかしが凄すぎです。
世界構造について語られないことは、まあ許せるのだけど、語られてきたトーンと、最後にもたらされた「投げやりな物語の閉じ方」との近年稀に見るギャップが壮絶にキマッタ感じかしら。


◇これだけ手を込んだ演出を積み重ねてきて、どーして最後、こうしちゃうんだろうなーっ。もったいなさ過ぎると思うのは、不遜な感想でしょうか。。。。。


◆◆以下メモ◆◆
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・神霊とバイオイドの闘争と融和を見守る「聖者たち」の「魂抜け」の絵面の奇妙さに爆笑してしまった。


・亀岩山を徘徊していたじっちゃんも魂抜けして解説。
「人間に作られたお前達も仲間なんだ!怖がるな!」


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・チホはやっぱり山津波の土砂の下?これだけが気になって・・・。せっかく改心したのに不憫すぎる。この物語で一番不幸かも。