■墓場鬼太郎06水神s成田良美d石黒育g清水昌之曾我篤史

◆奔放な想像力、・・・といえば聞こえがいいが、混沌とした関係性の薄い、原作の書かれた時代性に根ざした「浅い妄想」が怒濤のように押し寄せてくる回。


◇しかし、それはマイナスではなく、その発想の無邪気さに胸を打たり、鬼太郎達の(実に草創期のマンガらしく、作者の顔が浮かび上がってくるような)のんきだけど妙なリアリティのある素朴なセリフ群に癒さりするのがまず第一。
そして、何よりも、ノンビリとした雰囲気の中で、突如育ての親を躊躇いなく見捨てたり、大スターと設定した人物を忽ち殺してしまったりする無邪気な酷薄さにシビれてしまった。


◆特に、この回は、アニメオリジナルのアレンジである、育ての親の水木さんが水神に捕まってしまったところを、一片の躊躇いもなく顧みず「じゃあ!」と見捨てる鬼太郎が実によかった。
全編の無邪気さが、別の世界にシフトする「凍る瞬間」とでもいうようなカンジの演出もあって、とても印象に残ります。


原作では、特にドラマもなく文字通りいつの間にか消滅した水木さんと鬼太郎の共同生活の、効果的で劇的な終焉。


◆また、Aパート。鬼太郎の就職活動や、「人間でないものたち」に金をかす金融の大立て者との面会、給料の話、借金を取り立てられる物の怪の様子などは、実に無邪気にして素朴な味わいで、これがまた素晴らしい!


◇「水神」に借金を払うように一方的に捲し立て、酷いことを次々に行う鬼太郎の愛らしさったら無いよ。
非倫理的な行動を取り、自分自身がこのあと起こる全ての事件の原因なのに、本人は泰然と無意識ですっとぼけている。
野沢雅子さんの「無邪気だけどダークな感触」にチューニングされた演技も素晴らしい。


◆ところで、蛇足だけど、家賃が2倍になって毎日コッペパンのくだりなどは、高度経済成長前夜のキーワードをちりばめるオリジナルシナリオが欲しかった気がしちゃったな。
「それというのも、もうけが倍にならないのに、物価が倍になったのだ。」(原作の鬼太郎の唯一の言及)


◆◆以下メモ◆◆
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・原話は、「水神様が町へやってきた」とそれに続く「顔の中の敵」の冒頭部分。


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・以下、素朴な「俗物」にして「拝金主義者」鬼太郎の名ダイアローグ集。ああ、もうたまりません。愛しすぎる。


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「金を稼ぎたいのかい?」(焼き芋屋のオヤジ)
「はい。がっぽり!」(鬼太郎)


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「初任給は?」(鬼太郎)
「給料は差し上げません。その代わり取り立てた金額の1割を差し上げましょう。」(金貸しの大立て者キョウモリ社長)


「1割っていうと、100万取り立てると、10万円。1000万取り立てれば、100万円。・・・・・ぼろい!」(鬼太郎)
「イヒヒッヒッヒッ・・・狙うは一攫千金。一番借金の多い大物からいこう。」(鬼太郎)


・大物の「水神」から取り立てようとするが、信仰する老婆達にぼこぼこにされて。
「やっぱり小物からいこう」(鬼太郎)


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・水神に、1000万の借金の証文を掲げ、一方的に捲し立てる鬼太郎。
「ごめんください。水神さんですね。・・ワタシはキョウモリから来た借金取りです。・・あなたが30年前に借りた金、利息に利息がかさんで1000万円になってます。払ってください!」(鬼太郎)


「起きろー。・・君は借金を返す意思がないのだな。よおし、こっちにも考えがあるぞ。お金を返さないと・・・」(鬼太郎)


・いきなりマッチをすって放り投げる鬼太郎。しまいには痺れ薬を放り込む。
「これで動けまい。・・・財布が丸見えだぁ。イヒヒ」(鬼太郎)


「うはは、おこってんのか?でも、痺れ薬が効いて動けないだろう!」(鬼太郎)


「なんだ、(財布は)からっぽか。しけてんな。・・・でも手ぶらじゃ、帰れないな。」(鬼太郎)


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・水神からの取り立てに失敗し、キョウモリ社長からクビを言い渡された鬼太郎。
「就職戦線はキビシイ・・・」(ニセ鬼太郎)
「世間は厳しいぜ、一日コッペパン一個のカロリーじゃ・・」(鬼太郎)
「・・じっとしてないと体力持たないぜ」(ニセ鬼太郎)


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・水木さんにお金をせびる鬼太郎。
「小遣いくれ!」(鬼太郎)
「ええ、昨日やっただろう。」(水木さん)
「足りなーい。」(鬼太郎)
「カンベンしてくれ。こっちだって必死に働いているんだ。」(水木さん)


・腹を鳴らす鬼太郎を見て愛情が湧き、20円差し出す水木さん。
「みんなには内緒だぞ」(水木さん)
「イヒヒッヒッヒッ・・・・」(鬼太郎)


・この直後に、劇的な離別のシークエンスが来るのだけど、実に効果的なアレンジ。