■シゴフミ02ロケットs大河内一楼c佐藤竜雄d長井龍雪g岡本真由美総g川上哲也

◇1話遅れ。
◆うーん、いいねえ。素晴らしい。2話構成の後編。
◆「彼女」と「彼」は「同じ場」を共有し、馴れ合いで親しく会話をしながら、考えていることはまるで別、情念の方向も別、切羽詰まり具合も圧倒的に非対称で、そしてそれゆえ「彼女」は積極的に「彼」が嫌い。


◇そんな、コミュニケーションの徹底的な断絶に、夢見がち少年は気がつかない。
ここでは、(個人的に佐藤竜雄監督の作風が凝集しているキャラクターだと思っている)ムリョウの村田始くん風の、のほほんとした、おっとりとした「自然体の無邪気さ」を持つ少年のモーメントは否定され、その性質の強度は現実の残酷さに耐えることが出来ない。その美質は、残酷な体験が深く刻まれた人間の情念に敗北を喫することになる。


(佐藤監督にとっては、ある意味)作風の最良の部分の否定に走る脚本で、個人的にはなんとも感慨深いです。


◆また、この回は、人間の夢とか希望とか人徳とか、残酷な現実の前に一旦は跪いても、現実を変容する、すくなくとも一人の人間のささくれたココロを変えることが出来ると宣言して物語の幕を閉じるのだけども、この「付け足し感」はどうでしょう!


◇作り手の現実認識の厳しさを、私などは何となく感じてしまったのだけど、穿ちすぎかしら?本来は、この「ベタなまとめ」すら無しにしようと思っていたんじゃないかなあ。


◆ところで、具体的な演出としては、やはり前編で演出された「少年」の個性のディテールがポイント高い。
彼が、自作ロケットの製作に夢中で、「彼女」にウブな思いを寄せているくだりが実に丹念にノンビリと演出されただけに、このふたりの非対称な関係性が露頭する後編の少女のモノローグや情景が、非常に劇的な印象を残しました。(特に、少年の書く「くせ字」の「す」の扱いが非常に上手かった。これは非常に佐藤監督らしいと思いました。)


◇一瞬にして表象している感情が変容する「底が抜けた感じ」がとてもいいな。面白かった。