■天保異聞 妖奇士23印旛沼古堀筋御普請s會川昇c宮地昌幸d白石道太g坂本千世子山本善哉g協力山田正樹

◇本話を入れてあと3話と来て、どーやら話を畳みにかかってきた様子。
現世と異界の間に揺れてきたアトルが、「この世は、苦しみと不条理に満ちた地獄だ」という認識に振れて、現実を否定し、異界への没入を計るという展開。
「なんでヒトは死ぬ。何で苦しむ。・・・こんな世に、何の意味がある・・・」


このシリーズを特徴づける挑戦的な主題を、最後に前面に持ってきて盛り上げてくれなくちゃ嘘だよね。その意味では、(この回は発端部だけだけど)超頑張ってほしいと思います。


◇だけど、短縮の影響か、アトルの葛藤や苦悩が、いままで十分に語られておらず、この回の行動はいささか唐突な印象を受けちゃった。
現実の日常のささやかな満足と、その上に襲いかかる不条理な苦しみ、その間で木の葉のように揺れて、異界に惹かれたり、現実を見直したり、葛藤するアトルをもっとみたかったなあ。


◇あと、この回では、既にユキアツは、塗炭の苦しみに喘ぎながら、それでもささやかな日常を生きていくことが人間なのだと(シリーズ冒頭とは違って)カンペキ悟りきっていて、実は、個人的には非常に残念。
ユキアツには、シリーズ冒頭のノリで、それでもオレはこんな現実はイヤだと、39歳には似合わないジタバタをずーっと繰り返してほしかった。
だけど、これも短縮の影響なのかな、中途半端におわっちゃった印象。いやだってさ、これがこのシリーズのキモじゃん。(と思っているのはワタシだけ?)


◆◆以下メモ◆◆
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・さて話は、水野忠邦によって試みられた、利根川とつながっている印旛沼から、江戸湾へ掘り割りを作ろうとゆー事業を背景に展開されます。
・劇中でも語られているように、第一に、海外の艦艇に江戸湾を封鎖された場合に供え、印旛沼利根川経由で水路を確保しようという意図、第二に印旛沼周辺に頻発する氾濫対策として行われた事業らしい。
・個人的には、土木事業描写に力が入って無くてなんか残念。
・使役される徴発された人足の悲哀を描いたメインの展開的にもなんかドタバタしていたし。


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・ところで、水野忠邦に命じられて、甲斐の守鳥居耀蔵が、印旛沼普請の指揮をとらされて、失敗即失脚という状況で、水野失脚を画策する、老中土井利位、番所改所の後見人である水野の弟跡部良弼阿部正弘を怒鳴りつけるところがカッコヨカッタ。若本規夫さん素晴らしい。
「小さい、ちいさいなあ。」
「ふっ、水野様憎し、下らん権勢欲。わしが印旛沼に参るは、誰に命じられたからでもないわぁ。このくにのためじゃあ。」


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・江戸元さんが奇士の仲間に隠したがった<西のもの>の首領赤松様との関係は、どのようなものなのでしょーか。


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・「西のもの」は、印旛沼普請の人足にお札を配って、そのルサンチマンを増幅し妖夷に変身させていた。
・彼等の目的は、「新たな首」を呼び出すことだそうだけど、アトルが呼び出した妖夷が、「新たな首」なのかしら。