■シュヴァリエ24言葉ありきs冲方丁c古橋一浩d鏑木ひろ古橋一浩g千葉崇洋g補佐千葉崇明浅野恭司窪田庸高井川麗奈柴山智隆

最終回。
◇よく言えば、めくるめく展開、しかし(私の)感触としてはカナリ駆け足なカンジで、このシリーズの物語的に設計したポイントを、(いままで少ししか掘っていなかったところを)急激にザクザク掘り返して、急激に埋めもどしたとゆー印象。
掘り返した地面を埋めもどすと、なぜか土が足りなくて少しへこむんですよ・・・。


◇まず、ロビンくんが、この物語の結末として最重要な人物だったというのには意表をつかれましたが、最後まで、デオンくんが見せ場のない冴えない主人公だったのには落涙。
たとえ、歴史的には影の存在だとしても「歴史を動かす」とゆー、物語的な役割を振って上げて欲しかったような気がした。
リアの死の真相(王の犯行)を知って、それが自分(リア&デオン)の王家への忠誠に比べれば大したことじゃないと判断するや、静かに歴史の傍観者になったってカンジですよね。


◇自分はともかく、テラゴリー先生とかデュランとか、仲間を残酷に殺した張本人を、たとえ行為として実行されなくても、せめて、言葉でハッキリ殺してくれないと、(物語を見ている私などは)成仏できないよう・・・・と思ってしまった。


しかし、リア、一応落とし前をつけていますが、忠誠を建前にしているけれども、↓なんだか、非常に陰険な落とし前の付け方ですよね。
「誰も、王おひとりの為に、命を失ったのではございません。全てはこの国の為。王には、その耐え難い腐敗に於いて生きることを願い、私はその王座に忠誠を誓いましょう。」(リア&デオン)


(個人的には)この忠誠なんだか、悪意なんだかわからない微妙さもフラストレーションがたまった。しかも、物語的に<王家への忠誠>って、全否定されているじゃないですか。


どうせ史実なんて遠く冲の彼方に放り投げているんだから、デオンの最終的な史的立場なんて無視して復讐を果たして頂くのが、丁度よかったんじゃないかしら。
そういう意味では、最終話では、(マリー王妃を思い、王権を全否定し革命に走る)ロビンくんの方が、主人公としてキャラクターが立っていて好ましい。心なしか邪悪顔に描かれた今回のロビンくんの凛々しいこと!


◇さらに!デオンについてもう少し言うと、物語は、「(シリーズ冒頭が老デオンの語りから始まったのを受けて)デオンが、革命の血にまみれた歴史を静かに見ていた語り部として物語を包含する」という構造で話を締めようとします。


するのだけれども、年老いた顔のアップから、全身を見下ろすカメラに切り替わったラストシークエンスが、<スカートはいた老女デオン>なのが衝撃的に余韻を吹き飛ばしていて、凄まじかった。
いやー、シリーズ通して女装ネタはほとんど効果的に使われていなかったのに、こんな処で、史実に忠義だてしなくても・・・・と若干(いや、ものすごく!)思った。
あまりにもインパクトが有りすぎでした。爆笑してしまったじゃないですか。


◇あと、言うのも野暮だとわかるのだけど、ルイ15世の小物化ぶりが過剰すぎる。
リアを殺すにしても、ブロリー伯爵一人を従えて、「教会の冷え冷えとした一室に、一人剣を持ち、暗がりに隠れて待ちかまえているルイ15世」という図は・・・・・・・仮にも王様なんだから・・・・・とすごく寂しさを感じてしまいましたよ。
「ルイ15世本人が手にかける理由がある」止むに止まれぬ状況を作れなかったものでしょーか。


◇以上、・・・・なんだか、ネガティブな記述がどうにもとまらないのですが、ごめんなさい。申し訳ありません。許してください。
洋画歴史大作ばりの壮大な音楽に騙されそうにもなりましたが、なんだかすっきりしないんだもの。
物語の原動力である「王家の詩」の正体も、少しは語って欲しかったなあ。


そんな感じで、物語的には、(個人的に)フラストレーション一杯でしたが、若干のフォルムの乱れが散見されたものの、この回も<動き>は良好で、見応えありましたよ。
シリーズ通して、作画のレベルの高さは、素晴らしかったです。


◆◆以下メモ◆◆
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・この回で急激にマクシミリアンの忠実な弟子化するロビン。
「革命だけが、民衆の心から王を駆逐する。」(マクシミリアン)
「・・ならば、今必要なのは、・・忠誠などというモノに惑わされていた無力なわたくしでも、・・王を殺せるという事実です!」(ロビン)


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・やはり、王家の血筋の物語でした。
・しかし、マクシミリアンが実は本当のルイ15世だというのも唐突な気がしたが、リアが王家の血を引くマクシミリアンの兄妹だってのも、輪をかけて突然な気がした。(どこかに、伏線があったのだろーか。)
・そうするとリアとデオンの関係はどうなるの?


「語れブロリー。先代の王に何を命ぜられたか。」(ルイ15世)
ルイ14世陛下に、王家の詩が告げたのだ。・・・次の王が自ら王家を滅ぼすと。・・・滅びを避ける術は一つ。ある名を持つ子を王子と取り替えること。」(ブロリー伯爵)
「マクシミリアン・・・」(リア&デオン)


「さすれば、その子は沈黙と怠惰とをもって平和を守るであろう。・・フランス王家は詩によって救われ、束縛される。・・いっそ我が身をもって封じんと試みたが、身が腐り果てた。王家の血筋ではないゆえに・・・・。」(ルイ15世)
「では、リアは?詩を封じることが出来たリアは?」(リア&デオン)
「・・・王の血を引いている。王が生ませた公認されざる子のひとり。王家の詩はその存在を予言していた。」
「予言・・?」(リア&デオン)


「取り替えられた王子が己の血筋を知る時、王家を守る楯になるであろうと。」(ルイ15世)
「陛下がリアとあの男を引きはなそうとされたのは・・・・」(リア&デオン)
「二人は同じ父を持つ、兄と妹だ。・・・・始めの言葉ありき。詩の力を見いだしたことで、代々の王は、あらゆる望みと未来を、王家の詩に託した。」(ルイ15世)


「では・・・この全てが陛下のお望みどおりになったと」(リア&デオン)
「五歳だ・・・・予は五歳で王座につき、真実を知った。望み続けたことは一つだけ。・・・・・フランス人でありたい。フランス人に。」(ルイ15世)


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「誰も、王おひとりの為に、命を失ったのではございません。全てはこの国の為。王には、その耐え難い腐敗に於いて生きることを願い、私はその王座に忠誠を誓いましょう。」(リア&デオン)
「王命だ・・・予の騎士よ。この王座から予を救え。」(ルイ15世)


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「王座・・・それ自体が王への報復か。やはり、最後まで君は、私とは逆の道を選ぶ・・・」(マクシミリアン)
「王を求めるこころが、もはや悪なのだ。王の罪を彼はさばくだろう・・・・」(マクシミリアン)



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・ところで、リア&デオン的には、この回の最大の見せ場は、前回からの引きである、耐え抜いた末の、ルイ15世へのカチコミ現場。
しかし、怨み辛みが、「自分や仲間を殺した王ではあるが、あくまで忠誠の対象である!」とゆー、物語のベクトル的には全否定されるリア&デオンのすっきりしないヌルイ倫理観で曖昧にされた上に、まあ、次々にわんさかと邪魔のはいること!
この辺りの派手なお祭り騒ぎは、最終回っぽくて楽しかった。動き的にも充実。


・まずマクシミリアン、ロビン師弟が乱入し、すぐに、リア対ロレンツィアとの魔術合戦。リア対マクシミリアンの一騎打ちを挿入しつつ、そこに、突如乱入する「水銀獣」と化したサンジェルマン伯爵・・・・・うわあ、意味無く暴れ回るサンジェルマン伯爵がラブリーすぎる。