■シュヴァリエ21名誉の代償s菅正太郎c加藤敏幸d浅野勝也g柴山智隆山田裕子g補佐浅野恭司千葉崇明矢向宏志飯野利明高橋晶千葉崇洋横田晋一尾崎智美

◇先代のルイ14世に変わらぬ永遠の忠誠を尽くす<騎士>テラゴリー先生と、ルイ15世に忠誠を尽くす<騎士>であるデオン。
二人とも忠誠の対象は違えども、その行動原理は<騎士>であること。そして忠誠を尽くす主君の間に利害の衝突が生じれば、私的な感情は脇に置き、二人は戦わなければならない。
その原理は、主君と臣下の美しい関係という麗しき理想にみえるが、盲目の絶対服従であり、(この回で語られているドラマのように)個人の感情の圧殺であり、自己判断の否定であり、この物語的には否定され消え去っていくものなんだけど。


◇さて、テラゴリー先生は、ルイ15世の騎士道をないがしろにする行為に憤りを覚えると語り、心ならずも王の器でないと自ら感じているオルレアン公に、ルイ14世の代替として忠誠の対象を移している。(史実とちがって、この時代のオルレアン公を、ルイ14世の弟としている理由がこれか!)


ただし、どんなに忠誠という言葉で糊塗しようとも、ルイ15世憎しの私怨で動いている自分を、「忠誠」で、合理化しているカンジは否めないかも。
オルレアン公という小物をルイ14世の代替として選んだ理由だって、<彼の弟>であるという血統の近さという正当性だけだし、人格的にはルイ15世以下だというのが、テラゴリー先生の痛々しいところかしら。


しかし、どうあれ、テラゴリー先生を待ち受ける先は、この回ラスト、オルレアン公を身を挺して守ったように、<騎士>の最後の理想に不器用に殉じるしかない。ここでテラゴリー先生の物語は終わるのでしょうか。
「始めてしまわれたのですが、陛下との戦を」(デオン)
「我々騎士の、・・最後の戦だ・・・・」(テラゴリー先生)


一方、デオンもまた、盲目にルイ15世に尽くしてきたのだけれども、テラゴリー先生の非業の最期をみて、またルイ15世の裏切られて、消え去り否定される<騎士道>の向こうに何かをみる展開になるのかしら。
王家の書を一心に書き写す行為がデオンに何かをもたらすのでしょーか。


◇・・・・などという構図を考えてみたのだけど、騎士道精神が死んだのはいつなんだろうな。
ロビンが銃を愛用しているし、この物語の20年後の1775年のアメリカ独立戦争ではライフルが遣われていたと言うし、日本に火縄銃が伝わったのは、1543年。当時の戦場では、もはや銃火器の使用は当たり前だったような気がする。
騎士道精神の一部に、一対一の名誉ある闘争というのを、どうしても思い浮かべてしまうのだけれども、その意味では、この時代、もはや騎士道精神などなかったのではないかしら。


であれば、テラゴリー先生のいう騎士道というのは、一対一の名誉ある死についてではなく、忠誠に対する報いについて語っていて、ルイ15世の臣下に対する非道な仕打ちに憤っているのでしょうか。(劇中でも、それらしく語っているし)
息子をオーストリア継承戦争で亡くしているといっているから、その際に、死者を悼むこともなく、名誉も付与されずに・・・・という物語を想像してしまう。


だけど、その辺が一切描写されてこなかったので、みている私は、共感が難しい。次回、死の淵でそのあたりの事情が語られると、すっきりするんだけれどもさ。


◇この回も、全般に作画のレベルが高いが、個人的にはAパートのロビンくんの作画が印象に残った。特に、衛兵を銃の柄で失神させるが、すぐ起きあがってくるところを焦って再度打ち据えるところとか、マクシミリアンに迫られてバルコニーから地上へ飛び降りるところとか。


◆◆以下メモ◆◆
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サンジェルマン伯爵とポンパドール夫人が画策したのは、ルイ15世の子供のオーギュスト殿下に、<H∴O>の記号を付けて、彼を操ってルイ15世を退けようとゆー、実に悪者らしいシンプルなすがすがしさ。


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・テラゴリー先生、ルイ15世への恨み骨髄をデオンに述べる。
「騎士としての忠誠を尽くしたまでだ。・・・今もなお私の中に息づく、・・先代の・・王への忠誠を。」(テラゴリー)
「では・・・先生は始めから・・・」(デオン)
「あの方(ルイ14世)とともにあった誇りと栄誉を胸に、静かに余生を送るつもりであった・・・しかし、今の王は、何の名誉もない戦に騎士を送り続け、先代の王と共に培った騎士たるものの志を踏みにじったのだ・・・・。冥福を与えることも、名をたたえることもなく、ただベルサイユの栄華を保つ為だけに。」(テラゴリー)
「それが、先代王の弟君にあたる、オルレアン公閣下に与した理由ですか。・・・・」(デオン)


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・テラゴリーと対話するデオンの前に、現れるマクシミリアン。リアモードになったデオンと対話する。
・<私をころしたのは>という文句が、「あなたでは・・・・なかったのね・・・」の前に入る気がした。
「あなたでは・・・・なかったのね・・・」(リア)
「私達は知ってしまった。・・・・それ故、大切なモノを切り捨てるほか無かった。・・・今ここで引き返せば、全ては無に帰す。・・・いずれまた、王家の詩が開かれた後に。」(マクシミリアン)


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・デオン捕縛をマリー王妃に伝えるロビン。
・ロビンは、母とも慕うマリー王妃に縋り付かんばかりだけど、王妃様の言動に不審を抱いているカンジで、それは正しい直感だよ、きっと。
「王妃様・・・デオン様が王家の詩とともにオルレアン公に捕らえられました。今すぐ陛下におとりなしを。」(ロビン)
「陛下には私から伝えます。あなたは宮廷の誰とも会わぬよう・・・。」(マリー王妃)
「えっ・・・」(ロビン)
「陛下はオルレアン公の反逆を質す為、兵を送るでしょう。・・・あなたはデオンと王家の詩を救出してください。・・・但し、彼をここに連れてきてはなりません。」(マリー王妃)
「王妃様・・・・?」(ロビン)
「王家の詩の秘密を知ったモノは、その束縛を受けるのです。・・・ワタクシがかならずあなた達を守ります。・・・だから、いいですね?」(マリー王妃)


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・マクシミリアンにより、ロレンツィアのうなじに書かれた<AEIOU>はどういういみなんでしょーか。


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・オーギュストのうなじに記された<H∴O>をみて、ポンパドールに退場を迫るマリー王妃。罪に汚れた手に国政は担えないと述べ、抱えていたドクロをポンパドールに突きつけるのでした。ドクロ娘は、彼女の子供らしい。