■僕等がいた17・・・s山田由香c畑博之d畑博之水本葉月g都築裕佳子吉田咲子音地正行荒尾英幸

七美ちゃんが、ヤノと付き合うのに首を振らないのは、(ワタシ的には)残念なことに、心理的な優位性をかさに着て、振り回すことで、快感を感じているのではないんですよね。また、あたし以外の女と付き合うなんて我慢出来ないという、潔癖性でもない。
七美ちゃんが、ヤノをいったん振り、文化祭の夜に再度交際を申し込まれてなお、ためらうのは、死んだ奈々さんに申し訳ないといゆー、そんな純粋な気持ちなんじゃないかしら。ヤノの心の中の奈々さんを供養してあげなければ、申し訳なくてとても、付き合うことなどできない。


だから、ヤノが奈々さんの事を話してくれるのを聞いて付き合うかどうか判断しようと七美ちゃんが考えたのは、死者の声に耳を傾けてみようとおもったってことなんだろうなと思ってみました。


ヤノの心の中の死んだ奈々さんは、幸せであると語るのか、不幸であると語るのか。しかし、それは実は、その死者の声を聞く七美ちゃんのこころを映す鏡でもあり、だから七美ちゃんは、奈々さんに申し訳ないと思うと同時に、恐れも抱いている。自分自身の人間性をも映し出してしまうから。


・・・・なーんて、筆が滑ってしまいましたが、Bパート中盤の七美ちゃんのセリフ
「わたしは・・・たぶん、ヤノを焦らしている。はぐらかして、イジワルして・・・目の前で餌を振るような。・・信じる気持ちが、足りないから。」
「いろんな人の言葉が、浮かんでは。次から次へと浮かんでは消え・・・・何も迷っていることはひとつもない。・・心の中の意思と感情は別物。・・・私の気持ちだけが知っている。・・・何をどうしたいのか。・・・けど。信じる気持ちは、意思の力が必要で・・・ヤノ・・・あたしは、矛盾している・・・・・」


などというセリフを見ると、上の私の解釈はズレていることがわかる。・・・・むしろ、驚くべき事に「あたし以外の女と付き合うなんて我慢出来ない」という感情に近い。
純粋なだけに、分別がない感情がわき上がってくるのを押さえることが出来ないってところなんでしょうか。


しかし、死者を相手に嫉妬か。・・・・勝ち目がないし、浄化されがたい感情かも。
七美ちゃんとしては、死者である奈々さんを神棚に持ち上げる心理的な過程が必要だと思うのですが、さてどんな理屈をつけてくれるのかな。


ところで、この物語の主題は、<純粋なこころ>の話であり、腐った真っ黒なこころを持つ身としては、一方で、ケッ、いまどきこんな心理経路をたどるような純粋な人間いるかよっ!とも思うし、演出のあざとさ、戦略性を思って興ざめしたりする瞬間も確かにあるんだけども、このシリーズが秀逸なのは、それでもなお、心地よい叙情に押し切られてしまうところでしょーか。
音楽とモノローグと、それらを取り囲む間が素晴らしい。


◆◆以下メモ◆◆
・この回的には、ヤノの「本当の父親」のくだりが、最初に「犬」の札を切った後の、七美ちゃんを惹き付けるとどめの切り札みたいな語られ方をしていて、(いつもなら入りそうなそういうベクトルへのツッコミもはいらず)最初は、脚本的に非常にあざとくて、困ったなーと思っちゃった。
・だけど、何の説明せず、突然病院に子供時代のヤノを連れて行き、死んだ人の顔なんかを見るのを嫌がる子供に、毅然と死者の顔を見せるヤノの母親のエピソードが私のストライクで、それだけであんまり気にならなくなりました・・・・・